インフルエンザに感染すると、重症化や合併症を引き起こす可能性の高いグループのことで下記の方が当てはまります。
- 65歳以上の高齢者
- 妊娠
- 慢性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫、気管支喘息など)
- 心疾患(うっ血性心不全など)
- 腎疾患(慢性腎不全・血液透析患者・腎移植患者など)
- 代謝異常(糖尿病など)
- ステロイド等の薬剤投与による免疫不全状態の患者
ハイリスク群に当てはまる人は、日ごろから予防を心がけるだけでなく、重症化を防ぐためにも医師と相談のうえワクチンを接種することが望ましいと考えられます。感染リスクが高まったケースでは、ハイリスク群に限り、予防として抗インフルエンザ薬を処方できますが、保険適用外ですので注意が必要です。
また、同居するご家族や周囲の方は、ハイリスク群の人へインフルエンザをうつさないためにも、ワクチン接種を含む予防、インフルエンザにかかった場合の早めの受診が大切です。
日本におけるインフルエンザの流行・拡大は、小学校で始まると考えられています。小学生は罹患(りかん)率が高く、それが家庭で成人や高齢者に感染していきます。
高齢者の罹患率は低いものですが、逆に死亡率は高く、インフルエンザは高齢者にとって「老人の最期の生命のともしびを消す疾患」ともいわれています。
インフルエンザにかかると合併症を引き起こす恐れがあります。
合併症の種類は様々であり、中には死に至る重大な合併症もあります。
原因は不明ですが、インフルエンザウイルスの感染が発症の引き金となり、突然の高熱に始まり、1~2日以内に昏睡などの様々な程度の意識障害を起こし、短期間の内に全身状態が悪化し、死に至ることがあります。主に幼児に多くみられます。
ウイルス細菌混合性肺炎(インフルエンザの経過中に細菌性肺炎を併発するもの)と二次性細菌性肺炎(インフルエンザが一旦軽快し、その数日後に細菌性肺炎を続発するもの)があります。65歳以上の高齢者など、合併症のハイリスク群に多く、発熱、咳、黄色い痰などの臨床症状が認められます。
インフルエンザそのものによる死亡は少ないものの、高齢者の死因の多くは肺炎を中心とした合併症によるため、原因菌に対する抗菌薬を使った早めの治療と肺炎球菌ワクチンなどの積極的な予防が重要です。
A型のインフルエンザウイルスは、ヒトだけでなく、鳥やブタ、馬、鯨など他の動物にも感染します。通常はヒトからヒトへというように同種の間で感染し、ヒトが他の動物のインフルエンザにかかることはほとんどありません。
しかし、インフルエンザウイルスの遺伝子情報が子のウイルスにコピーされる時に、遺伝子情報が変更され性質が変わる(変異する)ことがあります。変異によって、これまでヒトに感染しなかったインフルエンザウイルスがヒトへ感染するようになり、さらに、ヒトからヒトへ感染するウイルスが現れる場合があります。このようにして、ヒトからヒトへ感染する新しいインフルエンザが出現した場合を、「新型インフルエンザ」といいます。
「鳥インフルエンザ」=「新型インフルエンザ」ではありません。
鳥インフルエンザは、自然界で鳥が感染するインフルエンザです。
通常はヒトに感染することはありませんが、東南アジア・中国などライブバードマーケット(生きたままの鶏などが食用として売買されている市場)が盛んだったり、人と鶏などが非常に近い環境で生活したりしている地域を中心に、鶏との濃厚接触からヒトが鳥インフルエンザに感染する例が報告されています。
今後、ウイルスが特殊な遺伝子変異を起こしてヒトからヒトへと感染する能力を獲得し、ヒト-ヒト間で持続的な感染が起こるようになった場合、「新型インフルエンザ」と呼ばれるようになります。
予防法は、帰宅後うがいや手洗いをする、マスクをつける、人混みを避けるなど、通常のインフルエンザと同じです。
しかし、新型インフルエンザの場合、ヒトは抗体を持っていませんので、予防のために、ワクチン接種が望まれます。季節性インフルエンザのワクチンは新型インフルエンザには効きませんが、新型インフルエンザに有効なワクチンを早期に実用化するために、世界中で研究が行われています。
新型インフルエンザの治療には、抗インフルエンザ薬が有効であると考えられています。このため、国や一部の自治体では、新型ウイルスの出現に備えて、抗インフルエンザ薬の備蓄を行っています。
更新日:2021/5/13